アドリブ

アドリブ

K邸新築工事。写真は梁をぶら下げたまま、仕口加工を微調整しているところです。
一見するとミスがあったのかと思いがちですが、そうではありません。棟梁が手刻みの精度を攻めているかどうかで、このような光景を目にする機会が増えると思います。
前回までの記事のように、仕口とそれを差し込む相手側の開口を加工する場合、きつめに加工する事は組み立てた時にどれ程強固に固まるか、木と木がビッチリくっつくか、強度と仕上に大きく関わってきます。現在の木構造は柱や梁が壁や天井に隠れ、仕口は金物によって引っ張るのが主流のため気にはしないかもしれません。しかし今回のように真壁(柱梁が仕上げに見える木造)で、なおかつ手刻みで金物を極力無くし、仕口や込み栓で締め固めようとする場合はわけが違います。大工さんの視点に立ってみると、現場で写真のような加工手間を無くすため、手刻みの時点で甘めに調整するほうが遥かに効率があがります。しかしそのような甘い考えを捨てて加工寸法を攻めていくと、現場で微調整が必要となってくる箇所が出てきます。結果、棟上(構造の組み立て)にかかる時間が大きく変わってきます。
手刻みでつくる木造では難しい事が他にもあります。それは材料の乾燥率についてです。プレカットでは入力したデータの通りに大きな機械が加工を施していきますので、木の材料自体が乾燥し固くなっていても問題ありません。手刻みの場合はそうはいきません。材料が乾燥しすぎて固すぎると刃がたたないため、ある程度の乾燥率の材料を使います。そうすると材料の伸縮が現場中でも発生するわけです。その事を考慮し、多様な加工技術や現場でのアドリブが可能な知識を身につけておく必要があります。また綺麗につくった仕口を現場で加工する必要が発生するということは、その微調整をも綺麗に仕上げる意識が必要です。それはノミの刃がしっかりと砥がれている道具を用意している大工さんの集団なのかどうかも重要です。
特に手刻みでは関わる人間の意識の高さで、仕上状態が大きく変わってきます。

2015/03/10

K邸新築<陶山設計工房>
/ 設計+<藤匠住宅>/施工